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2007年11月01日

11月1日 目から汗が。。。



当然ながらの報いだ。受話器を置いた右手にはうっすらと汗をかいている。
言い訳は一切したくない。全てはこちらの責任だ。
要請通り、休日返上で我が町工場は早急なる手直しを行う。





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我が九州は福岡、博多の町工場の我らが職人との協議の結果、休み無しの緊急対応が
決定した瞬間あいつは過去を思い出した。
何故そこで頭に浮かんだかは本人すら分からない。
今までも決して思い浮かんだ経験のないあいつ自分自身の姿だ。


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かなりの歳月を戻る。まだあいつの息子が幼稚園児の頃だった。
確か寒い朝だった記憶がある。
その前の日に急遽休日出勤が決まり、日曜日予定していた我が核家族の行事が中止となった。
あいつには殆ど休日はない。今ほどはないとしてもその頃も1ケ月の何日かしか休みはなかった。
そのため休日の計画は立てることすら難しく、又立てたとしても実行されるのは少なかった。

その日だけはあいつは大丈夫と断言していた。日曜日、核家族皆で出かける予定だったのだ。
ところが突然前日に納品の機械が止まったという連絡。
至急手直し要請が入る。その日では完了せず日曜日も続行する事に。

帰宅後なかなか言い出せないのではあるが言わねばならぬ。
「明日仕事になったばい。」
我が嫁様より「またね。もういい加減にしてよ。」との一言。
あいつは言葉が継げぬ。
その言葉限りでその晩の夫婦間の会話は一切なかった。

翌日の早朝。寒かった。今だにその感覚は体で覚えている。
一人身支度を終え今だ眠っている我が嫁様と息子の様子を眺める。
二人とも白河夜船の模様。ぐっすりと寝入っている。
寝癖が悪い我が息子は掛け布団より体半分が出ている。
あいつは息子の軽い体を持ち上げ布団の真ん中へと移動させる。
そして毛布、掛け布団を体全体を覆うように満遍なく整える。

確か、あいつが我が息子を抱えた時だった。
幼稚園に通う小さな体を持ち上げ持ち上げた瞬間だった。

あいつの耳に聞こえた。確かにあいつにはっきりと伝わった。
小さな声だが可愛い声が聞こえた。
「お父さん。。。」と。

あいつは思わず我が息子の顔を見入る。
目は閉じられ眠っている。起きてはいないようだ。
しばらく我が息子の顔を眺める。しかし、ぐっすりと眠っており気持ちよさそうだ。
決して起きたあるいは起きている形跡は全く確かめることが出来ない。
しかし、聞こえた。あいつ耳には明確にそして明瞭にはっきりと聞こえたのは間違いがない。

起こさないよう静かに優しく布団の真ん中に下ろす。
そして小さな毛布、掛け布団を丁寧に掛ける。

小さなバックを手に持つと我が家の玄関を出る。
玄関扉の鍵を閉め、そして再度確認する。
頭から離れなかった。あの眠っていながらのあの言葉。頭から離れない。

その日は徒歩通勤だった。
寒い上に風も少し吹いており曇り空が冬の季節を強調している。
早朝に歩いている者はおらず寂寥感が道筋を覆っている。

歩道を歩く。一歩一歩歩く。静かな空間からはあいつの足音のみが聞こえてくる。
しかし、あの声があいつの頭から離れない。
それどころか歩むたびにその声が何故かしら次第に大きくなる錯覚すらする。
誰一人あいつの前を塞ぐことのないアスファルトの乾燥した歩道をひたすら進む。

信号が赤だ。立ち止まる。声が聞こえる。いやあの声が忘れられない。
あいつの眠っているはずの息子の口から聞こえた言葉が何度も我が胸を打つ。
青に変わった。信号の色が変わった瞬間より右足を一歩出す。

次第に胸騒ぎが始まる。胸からの鼓動が感じ取れる。
その鼓動は次第に大きくなり息苦しくなる。
胸が圧縮され今にも何かを吐き出しそうだ。
胸が詰まり体の奥底から何かが滲み出てくる。
それは次第にこみ上げ逆らえない。
胸から次第に突き上げられとうとう顔にまで達する。
はちきれんばかりにこみ上げてくる。止め処もなくこみ上げてくるのだ。
それは涙となり目の瞳を濡らす。決して止まることはない。
目より溢れるのにまかせ頬を伝わる。それでもそのままにしている。
頬を流れその涙と言う流体はいつしか顔より地面へと落下する。
とうとう手が動く。開いている右手の到達の目標は目の周辺のようだ。
右手の人差し指でいよいよ目から滴り落ちるものをぬぐう。
その動作は一回のみではなく何度も行わなければならなかった。
それでも決して歩む動作は止めることなく進み続けた。

日曜日と言う日が幸いした。
そのあいつの様子を発見したの者はおそらくいないだろう。


気持ちが少しは和らいだのであろう。次第に胸の圧迫感からは解放されそして空を見上げた。
雲の多い心は決して晴れることは難しいと思われる空の色だった。
それでもあいつの心模様の天気は次第に晴れに向かう。

そしてあいつの目からこぼれるものは今では何もない。
あいつは一人呟く。一人小さな声で囁いた。


「ごめん。」と。。。




それでは又です。


読破中
「朽ちる散る落ちる」森博嗣著。


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 今現在あいつの息子は既に中学生。部活、塾とたいへん忙しい。
 親子揃って日曜日はないブログあるはず。
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2007.11.1by 博多の森と山ちゃん