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2007年07月21日

7月21日 振動コンベア。成功までの道のり。。。



ようやく順調に運転できた振動コンベア。
実は今回は様々なことを試した。
そのお陰で振動による運搬についてかなり勉強させて頂いた。

動画投稿時間の関係上
上のASKビデオは短時間版。下のYouTubeビデオは長時間版です。



















今回のエントリー内容については俺はどうしても書きたい。
俺はこの我が町工場の一人の職人だ。
既にベテランの部類には入るがまだまだ元気で気も若い。
今だ青二才な若者なんかには負けるはずもない。

今回又しても製作した振動コンベア。
このコンベアの第1号機は散々苦労させられた。
我が工場開発第1号機はかなり試行錯誤の上苦しめられようやく完成した。
あの光景は今だ鮮明に覚えているし決して忘れられない。
なあっ専務。


専務は、日頃、目新しい内容の図面を描き我が町工場へ持って来るがこの際は
今までとは打って変わった構造だった。
振動、特に振動モーター、バイブレータを使用した機械といえば振動ふるいそして
振動フィーダーは過去製作経験があった。
確かにこの製品も振動モーターは使用してある。
しかしだ。振動体であるトラフそしてバネ、その他のどの部品も今までの使い方とは
全く異なる構造だ。
その上、振動モーターは1台のみの使用だ。
振動ふるい、フィーダーとも必ず振動モーターは2台稼動させていた。
肝心のバネの使用法方法が共振と防振での2種類での使用だ。
まさしく過去見たことのないコンベアの図面だった。

工場の皆訝しく思いながらも製作にかかる。納期もないと言う。
先ずは作って動かしてみない事にはどうなるかは誰も判断できるはずもない。
専務はどこから情報を仕入れたのかは知らないが、果たして今回はうまくいくかどうかは
全く分からなかった。
まあっ。俺に言わせればいつもだが。

夏の暑い時期。ちょうど今頃の時期だったと思う。
特に暑かった記憶がある。帰宅後飲むビールは格別だった。
短納期だったので連日の残業の上皆で作り上げた。
暑さにもめげず皆必死で短い期間で完成させた。
先ずは図面通り作ったはずだ。
製作そして組立まで完了しいよいよ試運転。
うまくいくかなど動かして見ないことには分からない。

専務そして親父も見守る中先ずはブレーカーの電源を入れる。
短い期間で作られ組み立てられたその振動コンベアの運搬部分を皆しばらく眺める。
運搬部分トラフに載せられた運搬物は確かに振動している。
上下頻繁に動いてはいる。皆しばらく眺めるだけで誰も口を開こうとしない。

物が進まない。上下振動するだけで全く進行しないのだ。
夏の暑さにもめげず皆で作った振動コンベア1号機。無残にも失敗に終わった。
だが実のところ我が町工場はいつもこれが始まりだ。
正直最初からうまくいくとはあまり考えていない。
試行錯誤を重ねた上で順調に稼動するのが当たり前だと常に思っている。
それは私だけかどうかは分からない。
ただ、失敗したとしても誰一人として落胆した顔をしていないのは事実だ。

考える。皆で様々な意見を出し合う。
トラフに積まれた搬送物の位置は当初のままだが。既に停止している振動コンベアを
目に焼きつけ指を指し示しそして触りながら議論を重ねる。
早速改造だ。互いに気がつく部分の改造を始める。
専務も思いついた内容を即座に図面化すると言って事務所へ戻った。
納期がない。躊躇せずに改造に手をつける。
ガスで切断し溶接で付ける。その度に親父周りの職人と話し合いながら手直しを進める。
その内専務が改造後の図面を持ってきた。
その内容も同時進行だ。即実行する。素早く事を始めそして終わらせる。

遅くまでかかったと思う。改造後試運転を始めたのは涼しく感じていた。
夜中だったのかも知れない。
騒音など一切気にせず試運転開始。背に腹は変えられない。
ブレーカーの電源を入れる。振動音が即座に我が耳に伝わる。
動き出した。果たして進むのか。改造後物は進むのか。
進み出した。確かに進み始めた。しかしだ。逆だ。逆走するのだ。
皆振動するトラフの上で反対方向へと進んでいる搬送物を呆然と眺める。
しばらく眺める他なかった。
その日は仕方なく皆、その状態で帰宅したはずだ。

次の日。専務は手直しした図面を手にしていた。
それに基づき早速作り直し。今回はかなり改造するようだ。
反対方向へと逆走するのだから当初とはまるっきり逆の構造へと作り変えるというのだ。
理屈から言えばそうだ。その光景を目の辺りにしたのだから当然の結果であり
これからの改造としては至極納得できる。

確かその日は日曜日だったかと記憶している。
既に曜日の感覚など麻痺していたはずだ。
夜遅くまでかかって完成。組立後早速試運転。
皆が見つめるなか、電源は入れられ振動が始まる。
しかし、皆の苦労の甲斐もなくその物は前にも後ろにも動こうとせずただその場で上下に
振動するだけ。
前回は後ろに進んだのだから逆の構造とすれば進むはずなのに。
ところが結局元に戻る。元の木阿弥だ。
その日も落胆を隠せず夜遅く皆帰宅の途につく。

次の日。親父つまり社長は振動モーターメーカーへ相談したそうだ。
教えてくれるかなど分からないがうなく行かないのだから他に取る方法がない。
メーカーとしても製作に携わった訳ではないためヒント程度の内容でしか回答は
返ってこなかったようだ。
しかし、結局このヒントが起死回生、成功へと導くことになる。
当初は役に立つなど思いもしなかった。しかし藁にも縋る(すがる)気持ちとはこのことを
指すのだろう。
僅かなかすかな光を手探りで求めながら改造を続ける。
専務が図面化する前にそのヒントに基づき先ずは試してみる。
思いつく内容を皆出し合い先ずはやってみる。
改造終わるたびに電源を入れ動かす。うまくいかない。物が進まない。
決して諦めずに改造を続け、製作完了組立後試運転開始する。
実のところ何日か日が経過した。振動コンベアの第一号機は中々完成までには
日時が係り成功という2文字に到達しないまま試行錯誤の連続だった。

結局些細な試みで物が進み出す。
メーカーからのヒントを元に実はちょっとした改造でうまく行くはずだったのだ。
まさか誰しもがそんな簡単な改造で良いとは思いつかなかっただろうし
思い返せば当然するべき内容であったのであろう。得てして物事とはそんなものだろう。

ブレーカのスイッチを入れ物が流れる振動続ける振動コンベアを工場皆で眺める。
誰しもがほっとした安堵の様子。嬉しくもある心地よい一瞬だ。
苦労、苦心が大きければ大きいほどそのつかの間の喜びはいつも大きい。
惨憺たる月日が長ければ長いほどその爽やかなる風は長きに渡り我が町工場にそよぐ。

今回の振動コンベアは成功するのは製作開始前から分かっていた。
だが過去腑に落ちかなった点を色々と試してみた。
そのお陰で工場の職人達も又しても勉強になりそして分かった点が数多くある。
積み重なった疑問点が少しでも解決に繋がったしそして新たなる経験上の知識そして
体で覚えた蓄積された感触が頭だけではない体全身に身についたようだ。
これこそ体で覚えそして腑に落ちたといえるだろう。

いよいよ来週早々遠方での据付、本稼動となる。
多分現地での試行錯誤はあったとしても僅かなものであろう。


次はどんな腑に落ちない大物の製品の製作が待っているのか。


実は楽しみにしているんだぜ。

なあっ。専務。




それでは又です。


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読破中。
「静かな大地」池澤夏樹著


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2007.7.21by 博多の森と山ちゃん