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5月27日 止まる。。。



「今日の空はどこかしら淀んでいるようだが。」
現場へ向かう自動車のフロント越しに見渡せる空を眺めながら呟く。
最近我が九州は福岡、博多も黄砂だけでなく、光化学スモッグさえも見過ごしできない。
隣の国より汚染された大気が風にあおられ到達し、暑さと紫外線の化学反応により
光化学オキシダントを発生させている。
化学記号で書けばNOxあるいはHCが紫外線による化学反応により人体の目あるいは
気管支へ悪影響を与えるOxが定められた環境基準以上に発生しているらしい。






「しかし、喉の痛みはない。ただ曇っているだけだろうか。」
地球規模の環境汚染が考えうる選択肢を増やし、いらぬ心配や不安を掻き立てる。
その解決方法など私には思いつかない。
その国との十二分なる話し合いは必要であるのは確かだろう。

いつしか本日の作業現場へと到着する。
決して職人に怪我をさせる訳にはいかない。
今回はクレーンもちろんだが高所作業車も使用する。
安全第一だ。
ヘルメット、安全靴はもちろん安全帯も腰に取り付けさせる。
汚れる仕事のため使い捨て作業着そしてマスクも身に付けている。

今回は勝手知ったる場所そして要領至極理解している作業。
仕事に対する驕りが事故を招く場合がある。
用心はいくら重ねても良い筈だ。
決して焦るなとの言葉を何度も掛ける。
一刻も早く終わらせたいとの心情は理解できるが、何事かが起こればそれどころでは
なくなる。

おかげさまで何ら問題なく順調に仕事ははかどる。
「ここままいけば予定時刻より早く終わるな。」と私は見切りを付け
引き合いを頂いている別の場所へ現地調査のため足を向ける。
「ここの場所か~。」
作業上着のポケットからメジャーを取り出す。
一人その巻かれたスケールをH鋼のフランジへ引っ掛け測定を始める。
手に持っているノートに現地の漫画絵を描き、測った寸法の数字を書き込む。
前後左右あらゆる方向に足を運びその現地の様子を克明に目に焼き付けるとともに
ノートへも詳しく書き込む。

「後、高さを測らねば。」
メジャーを空に向かって立て始めた、そのときであったろう。
仕事を行っているはずの方向よりこちらに近づいてくる職人の足音に気づく。
その音の方向へ体を向ける。
やはり我が町工場の若き職人だ。
私を見つけるなり叫ぶ。
「ゴンドラが下がらんとです。」
「上に上がったきり下がらなくなりました。」

私はその言葉である程度は理解はできた。
しかしその場所へ先ずは向かわねばならないと判断する。
若き職人に連れられ急ぎ足で現場へ向かう。

到着後その様子を先ずは目に焼き付ける。
ほぼ言われた内容を理解した通りではあった。
作業車の黄色の作業台、ゴンドラは頭上高い位置に定まったままだ。
車のエンジン音は聞こえるがそのゴンドラには誰一人乗っていない。
今回問題を引き起こしている高所作業車のゴンドラに乗り作業していた職人は
既に地上へと降りていた。
今回の作業箇所がそんなに高位置での作業ではなかったことも幸いした。

その職人を捕まえるなり詳しくその出来事の経緯を耳に入れる。
その内容は。
高所での作業を終え、地面へと降りようとゴンドラの上でレバーを押した。
しかし動かない。
作業場所までの移動動作には全く問題がなかった。
ところが最も高い位置での作業を終え、下へ下がろうと操作を始めたが一向に動かない。
他のレバーもおそるおそる押してみたが全く反応がない。
日頃、使用しない非常停止あるいは非常ポンプボタンを押すが埒が明かない。
とうとうその本人は焦る気持ちを抑え、対策を練るべく自分の体を地上に降りる判断を
下した模様だ。

私は情況確認を終え、次なる対応について考える。
このゴンドラが上空に位置したままでは仕事を終えることはできない。
このままでは明日の客先の業務にさえ支障をきたす。
このまま長時間ほおっておけば、頭上に置かれた位置からすると、今現在は稼動停止中
ではあるが炉の余熱により作業車の油圧回路、電気回路は使用不可能になる可能性がある。
もし、炉に火をつけたならば短時間で油圧ホース、電気キャブタイヤの被膜は溶け
それこそ取り返しのつかない事態に発展するのは間違いないであろう。
実際のところ一刻の猶予もない。
何とか対応を尽くし少なくともその位置から遠ざけなければならない。
その位置から離れるだけでも最悪の事態からは逃れられる。

その職人と共に考えられるあらゆる手段を行使する。
作業車本体後方にも取り付いているあらゆるレバー、スイッチを扱う。
一旦触ったと分かっているのだが再度操作を試みる。
何度もアウトリガーのランプを確認する。
車の運転席のランプそしてレバー。
エンジン動作を何度も停止、開始を繰り返す。
しかし、結果は同じだ。
うんともすんとも音さえしない。
全く動作する気配すら感じられない。
どうすればよいのか。
二人で頭を抱え込む。
しかし、諦める訳にはいかない。
何とかして動かさない事には大変な事態へと発展する。
しかし、本日は日曜日。
整備できるうる会社はどこも休みだ。
作業車停止の原因を探りそして修理を行える会社はどこも本日は業務は行っていないはずだ。

意を決し客先担当者の自宅へ電話を掛ける。
事情説明し考えうる原因について相談する。
その電話口から電気系統の可能性の示唆を受ける。
確かに他に予想できる原因はない。
そこに辿り着くのは時間の問題だったかもしれない。

即座に実行する。
電気の配線を見るべくスイッチボックスの蓋の解体を始める。
それは高い位置に停止しているゴンドラ。
そして作業車本体。
何れもスパナ、ドライバーを片手にばらし始める。
しかし、作業車の細かい構造まではよく理解していない。
本体の蓋は確かに解体はできた。
しかし、どこから手を良いか皆目分からない。
日頃接していつ内容とは全く異なる。
ばらすことはできたしてもその具体的な原因をつかめるはずもなかった。
全く触った事すらない作業車の内部を眺め即座に対処することはできなかった。
それに作業車内容に詳しい業者への連絡すらできない情況だ。
全く手をつけずに元に戻す。
ゴンドラ上ではばらす事さえできなかったと下に下りてきた職人が嘆く。
もう万事休すか。
諦めるしかないのか。
何もせずとも手に汗がにじみ出る。
それこそ体全身が総毛立つ。
ただひたすら敢然とそこに停止している高所作業者を凝視する。
眺める時間はどれくらい経過しただろう。

他の職人が近づくなり私に口を開いた。
「ちょっとアウトリガーを動かしたもんね。」

私はその言葉を耳にすると一旦停止していた思考回路を動かし始める。
そうなると以前と変化した内容はそのアウトリガーとなる。
全く状況変化はないものだと理解していたが実際は変化した箇所があったことになる。
そうなると原因としては予想できるのはそこしかない。
アウトリガーの動作による何らかの影響だ。

しかし、アウトリガーのランプは確認した。
緑のランプは点灯しており何ら問題はないはずだ。
だが、その1箇所に望みを託す。
それのみに今後のことの成り行きを任せる他なかった。
時間はない。
即実行だ。

職人がアルトリガーのレバーをほんの少し動かす。
次に私が車体後方の非常ポンプのボタンを押しながら操作レバーをほんのわずか動かす。
音が聞こえる。
理解できなかた。どこから伝わっている音か理解できなかった。
職人が再びアウトリガーを動作させる。
続いて私は同じ動作を行う。
非常ポンプを押しながら操作レバーの微動作をさせる。
又しても聞こえた。
職人が大声を張り上げる。
「動いとうばい。」
ほんのわずかな動作のため気がつかなかったが耳に聞こえていた音の正体は
どうもゴンドラの動作音だったようだ。
すかさず私は又しても操作レバーを押す。
動いている。私自身の目にもその動作情況がありありと写った。
動き始めた。
間違いなく動いたのだ。




こちらに走ってくる職人の表情は満面の笑みであったのは書くまでもない。




それでは又です。




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読破中。
「素粒子と物理法則」R.P.ファインマン、S.ワインバーグ著 小林鉄郎訳

読破中。
「家族狩り 第四部」天童荒太著



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2007.5.27by 博多の森と山ちゃん



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