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12月13日 行事。。。



既に分かっているではないか。
どんなにあがき騒ごうとも結果は出ているのであり覆(くつがえ)しようがない。
だがあいつは向かわねばならぬ。時間こそが経営の要としても。
時の経過が如何に無駄に使われようともあいつは会社を出る。





2階事務所の階段を一気に駆け下りアスファルトの道を安全靴の足で踏みしめる。
左右の足を交互に足早に地下鉄の駅へと向かう。
冬特有のどんよりとした空を眺める事などせずに慌しく駅のホームへの階段を
降りる。
予想よりは混雑のない電車に乗り込み目的の駅で降りる。
九州一の繁華街の地下街を歩む。
天井より降り注ぐイルミネーションたる派手な照明を浴びながらさすがに年末だと
思わせる通りを人ごみを避けながら訪れるべきビルへと向かう。
一切地上へ出ること無しに空調設備で制御されコンクリート固められた
地下の人工空間をひたすら歩む。
目的のビルへ到着すると先ずは階段を上り自由に使用されている椅子が数多く置かれた
休憩コーナーと思しき場所へと移動する。
まだかなり時間はある。
あいつは決して遅刻することはない。必ず時間前に到着し時間に余裕があれば読書に励む。
今回もそうだ。一刻の猶予もならぬとばかりに活字に目をやる。
携帯電話に刻まれた時刻に目をやる。
そろそろ向かわなければならぬ。いよいよその場所へ向かわなければならぬ。
先程まで目で追っていた文庫本を鞄に押し込むと立ち上がり足を向ける。
一気に階段を登りきり廊下を歩む。
いつもながら薄暗い通りだ。その部屋の前まで到達すると周りを見渡す。
誰一人として見知った人物はいない。
部屋の扉の前に置かれた長椅子に腰掛け時の経過を待つ。
「こんな案件でもこれだけの数の業者を呼ぶのか。」と一人思いに耽る。

しばらくするといつもながらにマイクを通して部屋の中への案内の声が放たれる。
一斉に静かに待ちわびた皆立ち上がるとすかさず定められた室内へと足を入れる。
いつも見慣れた左右に高い仕切板が設けられた机に鞄を置き椅子へ座る。

向こうのカウンター越しに担当者は室内の皆の出席の確認を取る。
やはり予想通りだ。あの会社が今回参加している。
格の違う会社だ。かなうはずがない。既に結果は出ているではないか。
競争結果が判明している上での出席は茶番だ。いつもながらの思いを胸にしまう。
前もって書かれた金額の数字が書かれた書類を封筒に差し入れると
皆が行うようにカウンターの上へ置く。
担当者は揃った封筒からひとつひとつ書類を引き出し食い入るように眺める。

結果発表までに時間経過は僅かだった。
声高らかに会社名と落札の数字は部屋中に響き渡りあいつの落胆を即座に導き出す。
計算しつくされたかのように結果が出る。
それは御伽噺でも作り話でのない本当に事実なのだ。
格差がある会社同士の戦闘は戦う前からその後の事実は既に答えが分かっている。

これは社会のひとつの儀式であり決して避けては通れぬ時間の経過であるのか。
入札業者と言う称号を与えられたからには決して逃げることが出来ない
ひとつの式次第であるのか。

あいつにとってはこの定められた人工的行事は慌しい年末をより一層忙しくするだけだった。




それでは又です。


読破中。
「巨人たちの星」ジェイムス・P・ホーガン著


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2007.12.13by 博多の森と山ちゃん



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