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2月13日 汎用旋盤切削加工仕上げ開始。そして雪(1)。。。



我らが職人は寒さも熱きものづくり魂で吹っ飛ばす。


















あの時は最良の選択だと思った。
あの時点、あの場面では他には選択の余地などなく自分の独断で決断した。
周りには決して迷惑など掛けたくもない。
我が家族だけでも決して不自由な思いなどさせたくはない。
苦しかった。とても苦しかった。
自分なりに努力した。
自分なりには懸命に力の限り歯を食いしばり踏ん張ったつもりだ。
しかしこの世は決して自分一人で生きているわけではない。
様々な人々がそれぞれ一生懸命生きている。
だからこそ自分なりには頑張ったつもりだ。
自分なりにできる限りの全身全霊の力を込め生き抜こうと必死だった。
確かに既に過去の事実だ。今現在では遠き懐かしい昔話だ。
思い出を今更浮かべてみても何もならない。
常に未来を見つめ次なる行動を探索しそして実行する。
決して過去など振り返る必要などなくただ前を見て歩むだけだ。

だが最たる美貌を誇るあいつは一瞬たりとも忘れることはなかった。
自分自身が起こした紛れもない事実は決してあいつ女性専務の明晰なる頭脳からは
消え去ることはなかった。
あいつとて生身の畜生である生物たる人間だ。
類まれなる知識そして知能があろうとも感情はある。
常に冷静沈着なる装いを決め込んではいるが、誰にでも備わっている愛情、慈しみは
あいつとて存分にある。
ただ単なるある人物の過去の一つの決断と実行に過ぎないのでありそれは
他人にとっては何ら係わりのない事実でありはかなさだけが現実には残っている。
妖艶で奥ゆかしいあいつとてその過去の事実は今となってみれば思い出に過ぎないはずだ。
即座に忘れそして即座に胸にしまいこめば良いだけなのだ。
しかしできない。どうしてもできない。
あいつがどうあがこうとどう苦しもうと決して忘れることはできない。



スラリと伸びた2本の白い足をほんのわずか隠した真っ赤なミニスカート姿のあいつは
その家の前で待っていた。
白い綿がふわふわと落ちている冬の寒い日だ。
抜群のスタイルをなんとか抑え込んだ紺色の作業着の上にはブルゾンを着こみ
天上より絶え間なく落ちてくる真っ白な雪の粒に襲われながら
体中を震わせながらあいつは待った。
九州は福岡、博多の街に雪の降るのは久しぶりだが、その寒さを
しのぐため決して立ち止まらずその場で足踏みの動作をわざわざ行い
体を温めていた。
真っ白に雪の化粧を施したあいつはそれにめげずにしばらくその家の前で待った。

待ちかねたあいつの方向へ大きな傘を持ったひとりの少女が近づく。
背中には真っ赤なランドセルをからった小学生であろう人物があいつへ近づく。
学校帰りだろう。一人帰宅路を歩んでいる。
小さな体に大きな傘の組み合わせのためであろうか。
あいつには決して気づかずに前を通り過ぎる。
あいつは呼び止める。あいつはその少女に向かって声を掛ける。
少女は気が付く。そしてあいつの方へ振り向く。
あいつは再び声を掛ける。
あいつはその少女の顔表情を見たとたんにこみ上げてくる。
少女は不思議そうな表情であいつを見つめる。
あいつは心の奥底からのこみ上げてくる大きなものを必死に抑えると
あいつは少女へ近づき手に持った二つの包装された小さな箱を入れた紙袋を
少女へ差し出す。
少女は目の前に起こった現実を当初は全く理解できていない様子だったが
あいつが優しく今後の行動を教えるとようやく可愛い首を何度か縦に振る。
少女の空いた手にあいつは静かに紙袋の紐を握らせる。
あいつは少女の手に触る。その冬の寒さで冷たくなった手を触る。
あいつは微笑みながら再び声を掛ける。
少女のあいつを見つめる表情は何ら変わらない。
相変わらず不思議な事にでも出会ったような茫洋として顔立ちだ。
あいつはしばらく手を触ったまま少女を見つめる。
あいつは無口にただ少女をひたすら見つめていた。

突然傘と紙袋で両手がふさがったランドセル姿の少女はあいつの前から立ち去る。
少女は家に向かって走り出す。
あいつは少女を目で追う。後ろ姿を目で追う。
あいつには他には何もしなかった。あいつはただその後ろ姿を目で追うだけだった。
少女は玄関の前で不自由そうに傘を閉じる。
傘からは積もった雪がどっと落ちる。全の白色が落ちぬまま少女は傘の柄を
どこかしら掛ける。
家のチャイムを押す。しばらく待ってはいたが扉を開けると勢いよく中へ入る。
右手にはしっかりと紙袋のひもが掴まれていた。
少女が家の中に消えると周りは白の粒で覆われた静寂の時を迎える。
あいつは少女の姿を一部始終見届ける。
一切目を離さずその様子を目に焼き付けていた。

あいつは後にする。その家を後にする。
あいつの用事は全て終わった。あいつがするべく行動は全て無事終わったのだ。
あいつは後ろを振り向くと来た道筋を戻るべく歩み始める。
あいつを柔らかな白の粒で覆われながらも決して拭い去ろうともせず歩み出す。
あいつは少女がたった今入った家を後にしあいつ自身の帰路を歩む。

少女はやはり気がつかなかった。あいつがだれであるかは分からなかったようだ。
反面気づいて欲しい気もした。しかし全て自分がしでかした我がままだ。
過去自分勝手な行動の報いなのだ。改めて自分の愚かさに感じ入る。
しかし後悔は決してしない。唇と噛みしめながらも瞼がうるむ。
あいつは先ほどの手の感触。
そして目に入れた少女の表情は決して忘れないだろう。
それどころかこれからの大切な宝物になるはずだ。
あいつは降りしきる冬の雪の中一人唇をかみしめながら歩き出す。

突然あいつの耳に入る。
あいつの聴覚を突然刺激する後方からの声に気が付く。
あいつは思わず走る。
天から舞い散る真っ白な綿の粒に覆われた銀世界の空間を走った。
決して後ろを振り返らず。懸命に走る。
ここなら良いだろう。ここなら隠れるには都合が良い。
あいつは物陰に隠れるべく道をそれる。
あいつは道の本筋から離れ身を隠す。
そしてようやく振りかえる。あいつは体を隠したまま振り返る。
そして先ほどの見えない声の主に分からぬように目を向ける。
体を隠したまま覗く。
あいつは驚く。あいつは向こうに見える姿に思わず心臓が高鳴る。
あいつは銀世界の向こうに映えた姿に即座に体が震える。
それは決して寒さではなく昔の過去の事実が原因なのだが。。。




次に続く。。。




それでは又です。


読破中。
「創造する経営者」P.F.ドラッカー著。


「アルジャーノンに花束を」ダニエル・キイス著


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2008.2.13by 博多の森と山ちゃん



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