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2008年05月12日

5月12日 新設トリッパーベルトコンベア解体と設置。。。



現場工事は連日時間に追われビデオ撮影する余裕などあるはずもない。



















地上で次なる部品を組み立てているベテラン職人のもとへ息を切らしながら走り込むと
即座にあいつは大声を上げる。
「古いコンベアも上げます。」
その内容が職人の耳に伝わるとその人物は驚きの表情を隠せず呆然とあいつを見つめる。
どれだけ互いに沈黙した時間が過ぎたであろう。
「分かりました。」との答えを発するとベテラン職人は玉掛けワイヤーを手に取り
目的地へと颯爽と走り出す。



職人皆肉体的そして精神的に疲れているのはよく分かる。
この現場へ乗り込むまでも何件も物件を抱え現場工事製作と大わらわで息つく暇などなかった。
長きに渡り休日なしの夜遅くまでの残業の日々。
今案件も製作が何とか間に合ったくらいだ。

そして今現場が一連の物件の中でも最も手強い。
大型物件、空中作業そして短納期。ものづくり3拍子が図らずも揃っている。
当然至極に短期間で終わらせねばならずもし遅れでもすれば即座に零細町工場は
電話帳から消え去る。

あいつは職人へは何も告げては居ないのだがベテランそして若き職人皆一切不平不満を
口にすることなく今のところ懸命に仕事に没頭している。
それは確かにこの案件が終われば少しはこの怒涛の忙しさからは解放されるのを
知っているからかもしれない。



今しがた新設のベルトコンベアを2台の25トンクレーンで何とか設置したばかりだが
その緊張感から解放される間もなく次なるクレーン作業となる。
恐らく声を掛けられたベテラン職人は一つの大きな作業を終え古いコンベアは明日
設置すると思っていた節がある。
先ほどの驚きの表情は今回のクレーン作業の設置がどれだけ大変かを表現しているとも
言える。


古いコンベアの改造も間もなく終わりそうだ。
最後の作業は先ほど足を怪我し何針も縫ったベテラン職人が今だ若い職人2人を
指導しながら動き回っている。
その様子を眺めながらも既にそのコンベアへ2か所ワイヤーが掛けられている。
改造作業が終わると即座にその怪我の代償として名誉あるコンベアは2台のクレーンにより
空中へ舞う。
今だ新設コンベアの設置を高所作業車のゴンドラに乗り行っている2人の職人後方で
もう一台のコンベアはクレーンのワイヤーにより空を泳いでいる。
コンベアの先端が新設コンベアの最も後方でふわふわと漂っている。

町工場の親父のどなり声が響く。
「おいっ。先にこのコンベアを取付んか。」
空中作業中の二人は慌てた様子でゴンドラをこちらへ向かわせる。
たどり着くと手にコンベアの先端にくくりつけられたロープを手に取り所定の場所へ運ぶ。
クレーン運転手へ合図しながら少しずつ移動しながら位置決めを行う。
しかし、微妙な位置の配置はクレーンでは困難となる。
そしていつしかその職人は大声で叫ぶ。
「もう少し後ろ。」
最も後方で待機していたあいつと職人はフレームを吊り下げていたレバーホイストの
チェーンを緩めながら少しずつコンベアを後方へとずらす。



文章にするとたやすいのだが今コンベアは総重量が約4トン。長さも約20M近くある。
簡単に据付、移動出来る代物ではない。
既にあたりは薄暗くなり漆黒の闇に襲われるのも時間の問題だ。
しかし、そこまでしてもこのコンベアを設置するのには理由がある。

機械、機器設置の新設はやり易い。
設置環境を考慮にいれ製作しそして据付を行う。
あらかじめ計画を立て段取りをうまく行えば先ず失敗することはない。
しかし、既設の改造の上設置はそうはいかない。その上その現場工事に入る直前まで
稼働しているとなればなおさら厄介だ。
今回も現場へ何度も足を運び現状の寸法、設置状況の把握に努めた。
レーザー距離計、レーザーポイントあらゆる測量の最先端機器を搔き集めより精度の高い
寸法取りが最初に取る行動だ。
其れを元に2台のコンベアの接続位置、切断寸法そして接続した上での設置位置の
把握。
今回は2台を接続し1台のコンベアとしそれを新設コンベアへの中継の搬送手段と
せねばならない。
それも現場作業直前まで稼働しているため前もっての作業は何ら取り掛かれない。
その為如何に短期間にそして正確に取り行えるかを検討、熟慮したうえで
現地作業の日を迎える事となる。

もし改造したコンベアの長さが合わなければ。
もし設置位置がまずければ。
もし脚の位置がおかしければ。
重量4トン、長さ20Mのコンベアだ。
一発勝負でもしいずれ上記一つでも当てが外れればそれこそ一大事となる。

あいつを悩まし続けたのは実のところ新設コンベアではなく既設の改造の
搬送装置なのだ。
そのため何としてもその日のうちに改造コンベアを設置し如何なる状況になるかを
少しでも把握したかったのだ。
その胸の内を分かっていた者が果たしてあいつの町工場の中にいたであろうか。



「これが邪魔しもう後ろには行きません。」
突然中間脚設置当たりの擁壁に上っている若き職人が叫ぶ。
すかさず「ガスで切れ。」とベテラン職人から答えが返ってくる。
邪魔物を取り省くと又してもレバーホイストを緩めながら後ろへと下げる。
天空を見上げ親父が叫ぶ。
「まだ後ろか~。」
「まだ200は後。」
その声に反応し最も後方で後ろへと移動する作業を行っている職人が溜息混じりに呟く。
「もういかんばい。」
その様子を眺めながらあいつとその職人はコンベアそのものを押し黙ったまま見つめる。

「そうたい。もう1つのレバーで斜め後ろから引っ張ればよかたい。 」
その声が聞こえると即座にその職人は走り出しワイヤーとレバーホイストを抱え
戻ってきた。
準備を整えると即座に作業開始だ。
その職人の考え通り再びコンベアは後方へ動き出す。
「お~い。もうこのくらいやろ~。」
空中の職人からの声に必死にレバーホイストを操っていた手の動きは止まる。


親父が周りに大声で叫ぶ。
「ようし。一旦ここで固定しようや。」
その声が終わるや否や今コンベアの先端そして後方から固定すべくレバーホイストを
操る音が聞こえる。
その音が止むと再び親父が叫ぶ。
「クレーン屋さん。今日は終わり。お疲れさ~ん。」
2台の25トンクレーンの操縦室から運転手が出てくる頃は既に闇の帳は降り始め
既にあたりの景色は掴めない。

そしてあいつが声を掛けた職人があいつに向かい笑顔で言った。
「まさか今日上げるとは思いもせんやった。」

しかし、あいつは設置された古い改造コンベアを眺めてながらとんでもない発言をする。


「まさか長さがうまいこといくとは思いもせんかった。」と。。。




それでは又です。


読破。
「償い」矢口敦子著
私目にはそれほど。

「時の渚」笹本稜平著
ミステリーものとしては群を抜く面白さと思われる。


読破中。
「創造する経営者」P.F.ドラッカー著。


読破中。
「竜の卵」ロバート・L・フォワード著


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2008.5.12by 博多の森と山ちゃん