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2月1日 昔の。。。



本日の入札は蓋を開けてみると何と最低と最高では3倍の開きがある金額だ。
最たる美貌を誇るあいつ女性専務は今更の如く感じ入る。
どこでもできるものづくりは所詮値段の叩き合いになるのが通常だ。
よほど製作方法に差をつけねば会社そのものは成り立たぬ。
確かにそのやり方も一つの方法ではあろう。
だがあいつの女性ばかりの町工場の歩む道とは異なるのは書くまでもない。





金額の叩き合いは底なしだ。
やはり長期の戦略に基づき次なる製品を生み出さねばならない。
その内容はあくまでも売ることが前提でありそのための情報を
魅惑の2本足で稼ぎそしてアイデアをひねり出し完成させる。

だが、実際となると愛らしい口元のあいつには今現在の案件で忙殺されている。
5月GW工事までは一杯の状況であり既に今年の秋、そして来年の案件を
進捗させねばならない。
しかし、つぶらな瞳のあいつは最も重要視しているのはあくまでも自社製品であり
次なる革新の動くものづくりであるのは書くまでもない。




赤いミニスカートで少しばかり隠した色白のスラリと伸びた2本足で
本日の入札会場へと向かう。
その場所は九州一の繁華街にあり会社よりは地下鉄を使い向かう。
車ではあまりの混雑に辟易するばかりか駐車場代も馬鹿にならない。
当然のごとく常にその場所への行程では地下鉄の電車へと乗り込む。
乗り込むといつもながら揺られながら手に持つ本の活字を目で追う。

短い時間で目的の駅へは到着する。
その地下鉄駅の改札を抜けると必ず通らねばならぬ地下街へと出る。
そこは平日の今日であっても人は溢れており老若男女様々な人物が行きかう。
コンクリートジャングルの地下を巡る道筋の両側には様々な店が立ち並ぶ。
人目を引くべく店もそしてそこへと向かう人物もおしゃれに着飾っている。

抜群のスタイルをなんとか抑え込んだ紺色の作業上着姿のあいつは
何ら関心を示す訳でもなくただ入札会場への道筋を急ぐ。
歩む足の先は相変わらず先端が鉄芯で覆われた重たい安全靴だ。
その重さが通常であり何ら影響なしに早足で歩む。

しばらく歩んだであろう。片手には仕事鞄を下げたあいつの耳元にふと聞こえる。
騒がしい喧騒な地下を通る道だ。さすがにあいつはしばらくは気がつかない。
しかし、あいつは自分自身に向けて発する声が聞こえたような気がする。
それは一回きりではない。何度もあいつに向かい喧噪の中、訴えるがごとくに。
立ち止まり振り返る。あいつはとうとう振り返る。
あいつの後ろを向いた視線には当初は何も映らない。
混雑した人の動きばかりでその声が発する位置がどこであるかは皆目見当がつかない。
首をかしげながらもあいつは再び前を向く。そして再び歩き始める。
やはり聞こえる。あいつに向かっている声が耳に届く。
その声は小さな声だが次第に大きくなって行く。
その声の内容も次第にはっきりし始める。
あいつに向かって聞こえてくるその声は一体何であるかが明確になる。

あいつは又しても立ち止まり後ろを振り向く。
今回は気が付く。あいつに向って声を発している人物が誰であるかを。
今回ははっきりと分かる。
それは小さな人物だ。それは小さな子供だ。
その姿は遠くにあるのだが既にあいつには誰であるかが分かる。
その小さき人物は必死に走っている。大声で何かを叫びながら。
その小さき子供は懸命に走っている。
あいつのみに向かい大声で呼びながら。
小さき体はあいつに向い周り構わず体全身を駆使し近づこうとしている。
一刻も早くあいつに近づこうと頑張る。
大きな口を開け小さな2本足を交互に大きく踏み出し小さな両手を前後に
大きく振りながら。
あいつに向かって走っている。小さき子供のあらんばかりの力で。
小さき子供の今だ幼き未熟な体を大いに使いながらあいつに近づこうとしている。
あいつには既に誰であるかは分かっている。
遠くに見える姿であってもあいつは即座にその人物がだれであるかは
分かっていた。

あいつは膝を折り身長を低くする。
あいつに懸命に向ってくるその姿の目線の位置と同じにする。
そして両手を大きく広げ近づく姿を待つ。
こみ上げるものを抑えながらにこやか表情で向かってくる姿を待つ。
小さき子供の表情があいつの目にはっきりと映る。
満面の笑みをたたえているその子供の表情が見て取れる。
あいつに向かい子供が近づく。あいつの目の目の前まで近づく。
小さき子は全く速度を緩めることなく走り込む。
そしてそのままあいつの胸に飛び込む。
あいつは飛び込んできた小さき子を受け止める。
そして優しく抱きこむ。
あいつには小さき子供の可愛らしい言葉が耳に入る。


「昔のおかあさ~ん。」と。


そして向こうにはあいつの昔の両親が佇んでいる姿があった。




それでは又です。


読破中。
「創造する経営者」P.F.ドラッカー著。


「姑獲鳥の夏」京極夏彦著。


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2008.2.1by 博多の森と山ちゃん



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